訪問診療の治療は、どうして長くなるの?
- ナビゲーター:小笠
- 今回は、「訪問診療の治療は、どうして長くなるの?」というテーマでお話しします。
- アシスタント:田中
- よろしくお願いします。
- ナビゲーター:小笠
- 訪問歯科診療を行っていると、よく質問されるのが「なんで、治療にこんなに時間がかかるんですか?」ということです。
- アシスタント:田中
- 私も、なるべく早く終わらせたいと思っちゃいます(笑)
- ナビゲーター:小笠
- そうでしょうね。外来の場合は、疾患の治療が目的ですから、治療が完了すればそこで終わりです。なるべく早く治療を済ませたい、というのは自然な考えですね。でも、訪問歯科診療は、外来での治療とはちょっと事情が違うんです。訪問歯科診療では、疾患の治療が唯一の目的ではなく、患者さんの生活の質を維持することが目的です。だから、患者さんのステージによっては、その目的が異なってくるんです。
- アシスタント:田中
- ステージってなんですか?
- ナビゲーター:小笠
- いわゆる「病期」のことです。病期は、「急性期」「回復期」「維持期」「緩和期」の4つに分けられます。
- アシスタント:田中
- 「急性期」「回復期」「維持期」「緩和期」ですね?
- ナビゲーター:小笠
- そうです。「急性期」は、例えば脳梗塞とか心筋梗塞といった疾患が発症して、医療による治療が始まったばかりの時期です。「回復期」は手術などの治療によって、疾患が回復に向かっている時期で、疾患が目標とされるレベルまで回復したあとが「維持期」です。「緩和期」というのは、疾患が治療できる限界を超えた状態で、看取りの段階です。「ターミナル期」とも言われます。それぞれの病期によって、訪問歯科診療に対するニーズも異なるんです。
- アシスタント:田中
- そうなんですね。
- ナビゲーター:小笠
- 例えば、急性期では診療やリハビリよりも、ケアの比重が高くなります。これが回復期に入ると「診療」の比重が高くなり、維持期になると、「ケア」と「リハビリ」の比重が高くなるのです。
- アシスタント:田中
- 外来で求められる診療とはだいぶ違うんですね。
- ナビゲーター:小笠
- そうですね。もちろん、外来と同じく診療も行いますが、ケアやリハビリのニーズも相当高いんです。看取りの段階である「緩和期」では、診療やリハビリなどは不要になって、断然「ケア」の比重が高くなります。この表のように、診療、ケア、リハビリごとに、短期・中期・長期の治療方針も立てられています。訪問診療は、患者さんの状態に合わせた医療サービスを、そのときどきのニーズに合わせて、短期・中期・長期の治療方針を立てて提供されるものなのです。
- アシスタント:田中
- よくわかりました。ありがとうございました。